他者視点を持つ難しさ「GIVE & TAKE『与える人』こそ成功する時代」

「与える人」が成功する時代・・・なんて素敵なのでしょう。
本書によると、人々のネットワークが広がって、誰かと誰かが常につながっている現代では、人から与えられることばかり考える「TAKER」は化けの皮がはがれ、逆に「GIVER」として振る舞う人が成功するといいます。
そう考えると、SNSで誰とでもつながれるこの時代は、捨てたものではないなと感じます。

「GIVE & TAKE『与える人』こそ成功する時代」 アダム・グラント 三笠書房

書店に平積みされている表紙がとてもインパクトがある本書。
そんなこと言ってもきれいごとじゃないか?
GIVER=「心優しい人」が成功する時代というのが本当であれば素敵だけれど、もし本当であったとしても、自我が強い私はどう考えてもGIVERではない。
なれるものならなりたいし、さらに成功までするというならますます気になるけれど、いったいどうやって…?

…と、気になっていたところ、Audibleで見つけたので、散歩のおともに聴いてみることに。

GIVERとは自己犠牲を厭わない人ではない

大きな気づきは2点あって、そのうちのひとつはGIVER=「心優しい人」というのはちょっと誤解だったということ。
正確にいうと、自己犠牲のGIVERもいるのだけど、本書は自己犠牲を推奨しているわけではない。
単なるお人よしで自己犠牲をするGIVERではなくて、他者視点を持つGIVERが最も成功するのだといいます。

とはいえ、「他者視点」を持つことってとても難しいのです。
印象的なエピソードとして、結婚祝いのエピソードが挙げられていました。
自分が結婚祝いをもらう立場のときには、Amazonの欲しいものリストに挙げているものをもらうことが一番うれしくて、それ以外のものをもらうとがっかりするのに、自分が贈る立場になると欲しいものリストではなく自分で心を込めて選んだものを贈りたくなる、という話。
なるほどなぁ、と思いませんか?
贈る立場になると、相手が欲しいものリストに挙げているものに対して感じている魅力を過小評価してしまうのですね。

経験者ですら他者の痛みを過小評価する

先ほどの「他者視点って難しい」という話とも関連しますが、気づきの2点目は「経験者ですら他者の痛みを過小評価する」という事実です。

冷凍庫にいる人の苦しみを評価する実験が例として挙げられていました。
暖かい部屋の中でそれを評価するのと、冷たいバケツに手を入れた状態でそれを評価するのとでは、暖かい部屋の中のほうが苦しみを低く評価するといいます。
それよりも驚きなのは、バケツから手を出してしばらく時間が経ってから評価すると、暖かい部屋の中から評価するのと同じ評価になる、という実験結果でした。

自分の身近なところで考えてみると、育児の大変さが時間とともに美化されたりするのってそういうことなのかなと感じました。
もう子どもが成人しているような大先輩が、育児真っただ中で苦労している人に、「そんなかわいいのも今だけよ。楽しまないと」みたいなアドバイスをして「そうじゃないんだよ、今しんどいって言ってるんだよ」と感じる、というようなすれ違いって、こうして生まれるのでしょう。
大先輩は渦中を過ぎて、そのころの大変さを過小評価しているわけです。

もちろん自分にも当てはまることはあって、下の子も2歳になった今では、夜泣きで大変だったこととか、ベッドにおろすと起きてしまって苦労したこととか、あまり鮮明には思い出せないのです。
辛かったことは忘れてしまうという、人間が持つ都合のいい能力なのかもしれませんが。

他者視点のGIVERを目指そう

本書の後半には、すでにGIVERである人が、単なるお人よしを脱却して成功するためのポイントもたっぷりと説明されています。

ただ、現在の私は間違いなくMATCHER(GIVEとTAKEのバランスを取ろうとする人)なので、まずは他者視点のGIVERになるため行動するところからかなと思っています。
GIVERとして振る舞うために、「思いやりを心がける」と誓約するなんていうことは逆効果だということが実験で示されており、それよりも、とにかくGIVERとして振る舞うこと、その行動が重要だということでした。
なぜなら、GIVERとして行動してしまうと、その行動を正当化させないといけなくなるから。
なので、行動しているうちに本物のGIVERになるということです。
ちなみに、誓約が逆効果なのは、誓約の言葉によって自分がすでに良いことをしたと感じてしまうため、それ以上良いことをしなくてもよいように錯覚するからだとか。

ということで、GIVERとして行動する。
中でも、他者視点を持ったGIVERとして行動する。
他者視点を持つことの難しさはとてもよく理解できたので、それを念頭に置いて行動する。
過去に経験したこともその痛みを過小評価しているかもしれないと疑い、その渦中にいる人の視点を想像するということを忘れずにいたい。

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