「書く仕事」と聞くと、作家やエッセイストのする仕事をイメージする人が多いのではないでしょうか。
私はまさにそんなイメージを持っていて、その上で「いつか本を書いてみたい」という夢がありました。
そんな背景があって手に取った本書。
「書く仕事がしたい」 佐藤友美 CCCメディアハウス
読み始めてまもなく、書く仕事にもいろいろあって、著者の語ろうとしている「書く仕事」は私が夢見ている「自分の本を出す仕事」ではないということが判明しました。
最後まで読み進めると、最近の筆者は自分の本などで自分の書きたいことを書く道にも進まれているのですが、一方で誰かの書きたいことを代わりに書くという仕事もあり、本書の大半ではそちらについて述べられています。
その仕事をするために必要な能力は、本の表紙にも述べられているように文章を上手に書く能力だけではありません。
その能力は「書く仕事」とは言われないほかのいろいろな仕事にも通じるものだと感じましたし、むしろ私が日々の仕事をする中で「こんな風になれたらいいのに」と思う姿でした。
冒頭にも書いたとおり、本書を手に取った理由は、いつか本を書いてみたいと思っていたためでした。
仕事でも報文や提案書などで文章を書くことはあまり苦にならないし、書く力を磨いてこれだけを仕事にできたら、という淡い思いもありました。
でも、書きたいことがないのです。何を書けばいいのかわからない。
もっと経験を積んだら何か書けることが出てくるだろうか。
それが、本書を読む前の私です。
読んだあとの現在はというと、相変わらず「書く仕事」には魅力を感じていますが、見方は大きく変わりました。
まず、書く仕事とは本を書く仕事とは限らないことを認識しました。
さらには本を書く仕事といっても自分の書きたいことを書く「著者」になることとも限らないのです。
なんと、書きたいことがなくても書く仕事はできるのです。
本の著者や取材相手の話を引き出し、世界との接点を見つけて文章にすること、本書の大部分ではこうした「書く仕事」について述べられています。
世界との接点を見つけるためにはそのテーマに対する正しい相場感を持っている必要があるし、取材相手からいい話を引き出すためにはそのうえで読者代表として適切な質問をできる必要があります。
それが、書く仕事をするために文章の上手さよりも大切なことだといいます。
あれ、つまりそれって、今の私の仕事である営業や広報の仕事でもとても大事な能力なのではないか。
このことが本書を読んで「書く仕事」について感じた気づきです。
「書く仕事」について誤解して本書を読み始めたけれど、読んでみてよかった。
「書く仕事」も魅力的だけれど、今の仕事でもっと成果を出すためにも「書く仕事ができる」能力を磨いていきたいと思いました。
具体的には、相場感を知るためのリサーチの手順やインタビューの準備方法は仕事に取り入れてみたい。
営業としてお客様と深い話をすることや専門の技術者から面白い話を引き出すために、必ず役に立つと感じるからです。
経験がないことにもどんどんチャレンジして、いろいろな分野のスゴイ人と話をして、仕事の幅を広げていくことができそうです。
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