レジ袋が有料化されたり、カフェで飲むコーヒーのストローが紙になったり、プラスチックの使用を減らそうという流れがここ数年みられます。
「マイクロプラスチック」という言葉も耳にするようになり、私たちも小さなプラスチックを食べている…というのは、なんだか不安になる話です。
プラスチック問題とはいったい何なのか、マイバッグを使ってレジ袋を削減することに意味はあるのか、他に何かできることはあるのか…
本書を読んで、少し前向きな気持ちで自分にできる行動をとれるようになった気がします。
『海洋プラスチック 永遠のごみの行方』 保坂直紀 KADOKAWA
まず「はじめに」で、以下のように書いてあったのを読んで、これなら私にも受け入れられそうだと思いました。
この本では、脱プラスチックをあおることも、自分たちの努力をあきらめることもしない。環境問題は、とかく極論になりがちだ。
はじめに
便利なプラスチック製品を一切使わない、ということは私にはできないだろうし、だからといって、プラスチック問題に無関心なわけではない。
自分にもできることで問題に向き合いたい。
そのために、プラスチック問題とはいったいどんなもので、私たちにどんな影響を及ぼすものなのかを知りたいと思いました。
プラスチック問題はごみ問題
環境問題といってもいろいろあって、たとえば最近では「2050年にカーボンニュートラルを目指す」と宣言されてから、地球温暖化の問題が目につくと感じます。
プラスチックに関しては、原料である石油の枯渇という問題にも関連はするけれど、その割合は大きくはない。
石油の使用量全体に対して、プラスチックの原料となる分量は大きくなく、石油の使用量を抑えることを考えるならば使用量の多いエネルギー源からアプローチすべきとなります。
プラスチック問題は、あくまでごみ問題であると認識することで少し考え方が整理されました。
一章では、世界中の海がプラスチックで溢れていることが述べられており、さまざまな調査結果からその量や種類が解説されています。
用途としては、包装や容器といった「使い捨て」につながる使い方が多いということが印象的でした。
せめて、長く大切に使えるものならいいのに。
海にごみを捨てる人なんてそんなにいないでしょう?と思ってしまいそうですが、ポイ捨てだけではなく、各国のごみ処理の管理状況から、ごみとして回収されたものが漏れ出てしまうという実態も知りました。
また、街を歩いていてもごみが落ちていることに気づくことが多いです。
必ずしもポイ捨てだけではなく、ごみ集積所のごみをカラスが荒らすというような状況もあるのだと思います。
これらもただ街にごみが落ちていて美観上よくない、というものではなく、雨水と一緒に川や海にそのまま流れていくのです。
プラスチック問題はごみ問題なので、学校でも習った3Rが対策の基本になるようです。
まずは量を減らすリデュース、繰り返し使うリユース、資源として再利用するリサイクル、ですね。
世界のプラスチックごみのうち、リサイクルされているのは全体のたった9%だそうです。
日本でも本来の意味でリサイクルされているのは2割程度で、半分以上は焼却処分されているそうです。
生分解性プラスチックは救世主ではない
海に流れ着いたプラスチックごみは、外力によって小さく分割されていくことはあっても、なくなることはない。
私たちの時間スケールにおいては分解されることのない物質なので、海にどんどん蓄積されていくのが海洋プラスチック問題です。
「生分解性プラスチック」というものがあって、なんだか環境によさそう。
これなら海を汚さないんじゃない?
生分解性プラスチックとは何なのかよく知らなかった私は、そんなイメージを持っていました。
ですが、当然ながら生分解性プラスチックが製品として機能するためには、普通に使用していて分解されるようでは使えません。(こんな単純なことに気づかなかったとは・・・)
たとえば、ポリ乳酸という生分解性プラスチックであれば、60度以上の高温であり、周りに水分と酸素があるという条件がそろって、分解されるのだそうです。
種類ごとに分解される環境が決まっていて、適当に扱っても分解されるというものではない。
消費者として、「なんか環境に良さそう」と飛びつくのではなく、正しい知識を持つことが大事だと改めて思いました。
ちなみに、似たようなイメージの言葉「バイオプラスチック」も曲者で、上記の「生分解性プラスチック」と「バイオマスプラスチック」を合わせてこう呼ぶそうです。
「バイオマスプラスチック」とはなにかというと、よくレジ袋などに「サトウキビを原料としたプラスチックです」というようなやつです。
原料が石油でないというだけで、生分解性は必ずしもありません。
なんだそれ、石油問題はエネルギー問題の範疇でプラスチックの出る幕ではないのではなかった?
マイクロプラスチックを食べるとどうなる
マイクロプラスチックの定義は、大きさが5ミリより小さいものだそうです。
ポリエステルなどの衣類の繊維もマイクロプラスチックになります。
大きなプラスチックごみが砕けてできたもので、川にも海にもたくさんあり、生物たちがこれを食べている。
もちろん私たちもマイクロプラスチックを食べている。
なんとなく気持ち悪い話です。
正直、この話を聞いたときが一番、プラスチック問題なんとかしなきゃ、と思います。
本書で紹介されている研究によると、今の海の状況では、生き物の健康に悪影響を及ぼすほどのマイクロプラスチックの濃度になることはありえないそうです。
ですが、このままマイクロプラスチックが増え、2060年頃には、そうなる可能性もあると書かれていました。
私の感覚では、2060年ってそう遠い未来ではありません。(そのころ子どもたちはまだ40歳前後だし)
それでは、私に何ができるのか
この問いに関しては、プラスチック問題はごみ問題なので、やっぱり地道に3Rに取り組むしかないのですよね。
急に身近すぎる話になりますが、マイバッグやマイボトルを持ち歩く、使い捨てのスプーンやフォークは必要最小限にする。
使ったプラスチック製品はきちんとごみに出す。もちろんポイ捨てはしないし、自治体のルールに従って分別する。
そういえば最近、実家ではプラごみの分別が始まって、結構厳密に分別しているみたいです。
私が住んでいるところではペットボトルだけだけど、調べてみると23区内でもプラごみの分別がないのは少数派みたいでした。
実家で分別している話を聞いたときには、「え!めんどくさっ!」って思ってしまったけれど、今は「分別するようになったら頑張ってやりますよ!」という気分。
きっと想像以上にプラスチックを使っていることが可視化されるんだろうな。
みんなはどんな本読んでるのかな?
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