書かれていることのほとんどに強く共感し、これほど活躍している女性でも同じように悩むのだと励まされた。
確かに、著者自身も述べているように、本書のメッセージが強く響く層と、反発を覚える層がいるのだろうとは想像できる。
外で働くことを選択した母親であって、高度な教育を受けていると自覚している私にとって、著者のメッセージはとても強く響いた。
ただ、共感を覚えることが多くある中で私がはっと気づかされたのは、反発を覚えるであろう層とも手を取りあって、社会をよりよくしていこうというメッセージである。
「LEAN IN 女性、仕事、リーダーへの意欲」 シェリル・サンドバーグ 日本経済新聞出版社
実はこの本を読むのは2回目で、1回目は第一子を妊娠中だった6年前。
当時、妊娠中の体調不良もあってまだ子どもも産まれていないのに仕事との両立に悩んでいて、相談した先輩に勧められて読んだ本だった。
今思えば、当時は「妊娠中」ということにものすごく意識が行っていたので、著者の妊娠中の記述は印象的だったのだけど、全体のキャリアの部分のメッセージについてはあまり印象が残っていなかった。
また読んでみようと思ったのは、『独学大全』を読んで「私淑」をシェリル・サンドバーグ氏にしたい、と思ったからで、彼女がどのように考え、どんな努力をして、成功を収めたのかを改めて知りたいと思ったためだった。
華々しい経歴の彼女だが、それだけに並大抵ではない努力をしているはず。
タイトルの「リーンイン」という主張の背景には、強い思いと自信があるのではないか、そうしたエピソードから学び、手本としたいと思った。
結論から言うと、まずはこれほど輝いている彼女にも自分と似たような悩みがあるということに励まされたのと同時に、この悩みを抱えないようにするという努力は無駄だとわかった。
具体的には、外で働く母親である自分と家で働く母親を比べてできていないことに注目する、というようなことである。
仕事で大活躍している女性はこのようなことで悩まないのではないかと思っていたが、少なくとも現在の社会ではどんな母親にとってもこの悩みはつきものであるらしい。
本書の中では、「母親にとって罪悪感のマネジメントは時間のマネジメントと同じくらい重要」と述べられている。
この罪悪感ゆえに、外で働く母親である私は、違う道を選んだ人、ここでは、家で働くことを選んだ母親に不合理な怒りを覚えたりすることが、ないとは言えない。
自分の未熟さが嫌になると思っていたが、本書によると、選択することによって何かを犠牲にしているわけだから、自分の選択(外で働くにせよ家で働くにせよ)に完全に満足している人はいない。
だから、自分とは違う選択をした人に過剰に反応するのだと言う。
罪悪感と自信のなさから自分の決断に疑いを抱いた結果、違う道を選んだ人に怒りを覚えるのだという。
自分のこの気持ちが言語化されたことでまず救われた気がしたのだが、このような罪悪感を覚える女性たちに対する著者のメッセージはこうである。
誰もが自分の選択に心安らかでありたいと思っている。だから今すぐお互いに認め合おう。
認めて欲しいと思うばかりでなく、まずは自分から認めることだと気づかされた。
そして、まずは女性同士が手を取り合うことが第一歩であると思う。
父親が迎えに来て母親が働いているのがもっとあたりまえになれば、男の子にとっても女の子にとっても選択肢が広がる、という主張には大いに共感する。
そのためには、家事育児を担当するということが、もっと理解と尊敬を得られるようになる必要がある。
女性同士で、外で働く・家で働くお互いを認め合えていない状況では、こんな理想の実現は遠いだろう。
まずは外で働く母親である自分が家で働く母親を認め、家で働くという仕事の価値を理解し、尊敬することで、本当の平等な社会にもつながるのだと信じる。
外で働く選択をした私が目指すもの
もうひとつ、本書の最も大きなメッセージにも大いに励まされた。
真に平等な社会をつくるため、女性は高い地位を目指そうというメッセージである。
たとえば、本書の中のエピソードでは、著者が妊娠中に妊婦用の駐車場を作ったように、女性が高い地位につくことで組織や社会を変えられるということである。
正直なところ、私は、今50歳くらいの女性部長の皆さん、役員になって会社を変えてくれないかなぁ…なんて他力本願なことを思っていた。
それまでは、今の男社会な会社で頑張るからさ…と。
自分が変えられるとは思ってもみなかった。
でも、そうだ、経営者の半分が女性になるのが真の平等ならば、私もやらなければならない。
先に述べた自分の選択にいくらかでも心安らかでいるためにも、仕事に打ち込み、挑戦し、上を目指していこう。
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